Chemin du Gastronome
Le passage
パッサージュのぶらぶら歩き

第1回~第3回現代フランス料理技術特別講習会        par M.Jean Delaveyne

フランス料理やフランス文化に関わるあれこれをお伝えする「Le passage」。
今回は、55年ほど前に初めて開催された現代フランス料理技術特別講習会についてお伝えいたします。


来年、2025年3月に開催される現代フランス料理技術特別講習会は第60回目を迎えます。
日本のプロのフランス料理キュジニエの皆様のために、日本で初めてフランスからフランス人シェフを招聘して講習会を開催したのは1969年。日本のフランス料理業界が大きく花開きかける直前でした。

フランス料理を通してフランスの文化を日本に広めたい、フランス人シェフに日本の良さを知ってもらいたい、そんな想いから始まった日仏文化交流・親睦の意味合いを含めたこの講習会の
第1回目~第3回目の招聘シェフはJean Delaveyne(ジャン・ドラヴェーヌ)氏。

ドラヴェーヌ氏は、’ヌーベル・キュイジーヌ’の先駆者と言われ、ジョエル・ロブション氏・ミッシェル・ゲラール氏など、その後に大活躍するフランス人シェフに多大なる影響を与えた人物です。

ドラヴェーヌ氏の言葉

第1回目の講習の際にドラヴェーヌ氏は、

「私はフランスの料理製菓技術を『教える』ために日本に来たのではない。『フランス人はこの様に料理製菓をこの様に作っています』『フランス人はこの様に料理製菓技術をこの様に考えています』ということを日本の皆様にお伝えして、『このことを通じて日本の皆様と話し合いの場を作るため』に来たのだ。」と仰っていたそうです。

ただ技術を押し付けるような講習ではない、指導者としてではなく「フランス料理」の伝道者として来日し、講習を受講しにきた日本人キュイジニエの方々と親交を深めたのでしょう。

また、「私はテキストに細かいことを書くことはしていない。また、テキストにとらわれないで説明をする。つまりは必要なことは皆様自由にノートをとっていただきたい。」
「私の知っていることはすべてを皆様方の前で説明する。」
「講習の途中で不足な点があったら、後ではなくその場で直ちに質問していただきたい。できるだけたくさん質問していただきたい。」

と、テキストに頼らずに真剣に講習を受けてもらいたいという想いと、ご自身が知っていらっしゃることすべてを伝えたいという想いがわかるような言葉も残していらっしゃいます。

これらのドラヴェーヌ氏の言葉は、フランス文化を識る会創始者・倉重舜介が書いたメモ書きに残されていました。

講習会を受講された方はご存知だとは思いますが、現在もテキストには「作り方」は書いてありません(材料・分量のみ記載)。そんなドラヴェーヌ氏の想いを50年に渡り繋いでいます。

とはいえ、当時はまだFaxもメールもない時代。フランスと日本のやり取りはほぼすべて手紙でした。
そんな時代でしたので、日本に到着してからルセットを書いてもらい、材料の準備をしていたそうです。テキストに何も書いてなかったのはそんな事情もあるかもしれません。

当時の講習会


講習会は東京だけでなく、大阪・福岡・札幌等でも開催され、ドラヴェーヌ氏の滞在は1ヵ月~1ヶ月半ほど。期間中は毎週3日間ほど講習が開催されていました。

当時の案内状です。3回開催する時点でまだ「第〇回」と記載されていません。そんなに長く続けるつもりがなかったことが伺えます。

内容は、フランスの各地方のテロワール料理が中心。ヌーヴェル・キュイジーヌの先駆者と言われるドラヴェーヌ氏ですが、それはきっとフランス各地方の料理やクラシックをしってるからこそ。日本の料理人の皆様にフランスのテロワールを知ってもらいたかったのではないのかなと思えるプログラムです。

ドラヴェーヌ氏直筆の履歴書

この画像はドラヴェーヌ氏直筆のご本人の略歴です。料理人としてとても有名なドラヴェーヌ氏ですが、M.O.F.(フランス国家最優秀職人章)は料理部門ではなく、パティシエ部門。
フランス文化を識る会の講習会でも第1回目の製菓講習会の講師はドラヴェーヌ氏です。

フランス料理というフランスの文化を伝えるべく59回にわたり、フランス人シェフにこだわって講習会を開催してまいりましたが、2025年に開催する第60回目は、初めて日本人である関谷健一朗氏をお迎えいたします。関谷氏はロブション氏の愛弟子。ドラヴェーヌ氏の孫弟子にあたります。

50~60年前は、渡仏することが簡単でなかった時代。そんな時代に誰が将来日本人M.O.Fシェフが誕生すると想像したでしょうか。フランス料理の世界で活躍する日本人シェフは最近特に増えています。それは、ご本人たちの自己研鑽はもちろんのこと、日本でフランス料理の世界を広げたいと思っていた数々のフランス人シェフ・日本人シェフの積み上げてきた証です。

毎回、フランス人シェフからフランス料理文化を、フランス料理の世界を伝えていただきましたが、
第60回目は、関谷シェフがみてきた日本人からの視点で、フランス料理を伝えていただきます。

きっと、新しい発見が皆様に届くことでしょう。

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